現在、企業経営で「ウェルビーイング」が注目されています。
それは「幸福・幸せ」という
主観的な感情・感覚を科学的・客観的に表し
その価値をビジネスパーソンの生産性の向上や
ストレスの軽減などに生かそうと試みているからでしょう。
従来の典型的な企業の生産性 → 社会の発展は、わかりやすくいうと
従業員が様々なこと(個々人の自由・時間・プライベートなど)を犠牲にして
歯を食いしばって、我慢してこそ成果は実る、と捉えられ、社会のコンセンサスを得ていた一面は否めません。
しかし、時代が変わり
ウェルビーイング(幸せ)な状態こそが成果を生み、社会の発展にもつながる
という流れに変わっている途中である、という見方もできます。
そのような時代の変化の1つとして
企業におけるウェルビーイングやウェルビーイング研修は、具体的にどう実現できるのかを解説していきます。
これで、ウェルビーイングを実感できるような職場づくりにお役立てください。
もくじ
ウェルビーイングとは何か
Well-beingウェルビーイングとは、
「心理的・社会的・身体的に健全であり、幸福で満足している状態、またはそのような状態に向かっていること」を意味します。
これは世界保健機関(World Health Organization: WHO)が1946年に定めた「世界保健機関憲章」の前文において、「健康」においての定義されて、引用されることが多いです。
この概念は、心理学、社会学、経済学など、
多くの分野からのアプローチから構成されています。
人事経営では職場におけるウェルビーイングの実現が「人的資本経営」の重要な項目の1つになっています。
そこで、今回は特に人材育成の面でのウェルビーイングを考え、
それを実現するための具体的な研修を紹介したいと思います。
ウェルビーイングが生産性を上げる、とは
まず、ウェルビーイングであることで
どのような効果をもたらすのかを見ていきましょう。
【生産性で30%、セールスで37%、クリエイティビティでは3倍も高くなる】
Lyubomirsky, Sonja; King, Laura; Diener, Ed The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?
【病欠を使う日数が66%減る】
Start Smiling: It Pays To Be Happy At Work
【社員の定着率が90%にまで上がった企業もある】
Inside ‘BS’ Tech Jobs: What a Chief Happiness Officer Actually Does For a Living
【職場での事故が48%減る】
How Employee Engagement Drives Growth
【従業員のウェルビーイングと生産性の相関が明らかになった】
https://www.armg.jp/news/newsrelease/2022/1125/
以上のように様々な側面で企業に利益をもたらすことがわかっています。
前述したように、歯を食いしばって仕事をすることではなく
幸福感を感じて仕事をすると生産性が上がる、という根拠になると思います。
↓ 仕事でウェルビーイングを向上するための記事はこちら
仕事でのウェルビーイングを向上するには?職場の環境づくり5つのポイント
ウェルビーイングの要素
毎年発表される世界幸福度調査にデータを提供しているギャラップ社(アメリカの世論調査研究所)は、
以下のように
ウェルビーイングとは何かについて5つの要素を提示しています。
5つの要素 | 定義 |
キャリア ウェルビーイング | キャリアに対する幸福。 ここでは仕事としてのキャリアだけでなく、人生(子育て、ボランティア、勉強)もキャリアの一部として捉え、仕事とキャリア面での幸福を構築することを指す。 |
ソーシャル ウェルビーイング | 人間関係に対する幸福。 どれほど幸福をもたらす関係性を築けているかが判断基準になる。交流している量ではなく、信頼でき、愛情のある人間関係であるかどうかがポイント。 |
フィナンシャル ウェルビーイング | 経済的幸福。 報酬を得られているか、報酬に納得しているか、資産を自己管理できているかがポイント。そして、幸福を感じるお金の使い方ができているかが大事。 |
フィジカル ウェルビーイング | 身体的な幸福。 心身ともに健康で、不自由なく重い通りに行動することが出来ているか、ポジティブな感情をもって働くことが出来ているかがポイント。 |
コミュニティ ウェルビーイング | コミュニティに関する幸福。 他人、グループやコミュニティに影響を与えているかが判断基準となり、主なコミュニティとして居住地や家族、親戚、友達、学校、職場などを指す。 |
この他米国のセリングマン博士が提唱するポジティブ心理学の指標では
以下の5つの要素(PERMA)でウェルビーイングは成り立つと考えています。
1.Positive Emotion:ポジティブ感
2.Engagement (Flow)関わり,没頭や突入 楽しいことに関わる
3.Relationship:豊かな人間関係 協力してくる人を見つけること
4.Meaning:人生の意味や意義 肯定的な意味を見つける
5.Accomplishment:達成、マスター,やり遂げること
このように、ウェルビーイングは様々な角度から定義されています。
それだけ、まだ新しい概念です。
と同時に色々なところで注目されているとも言えるでしょう。
いずれにせよ、企業でウェルビーイング研修を
行う場合には目標を立てる時、効果測定などで
これらの定義を使って企画立案していくと良い
でしょう。
ウェルビーイング研修としてどのようなものがあるか
今回は、ギャラップ社の上記の5つの項目を
枠組みとしてウェルビーイング研修として
どのような研修があるかを考えてみましょう
いくつかの研修の目的と主な内容を取り上げていきます。
リーダーシップ研修
目的
組織内のリーダーが従業員の幸福感と健康を促進し、生産性を向上させるようなリーダーシップを培うことです。
該当するウェルビーイング項目例
キャリアウェルビーイング
ソーシャルウェルビーイング
コミュニティ ウェルビーイング
内容
・リーダーとしてのあり方
・部下を効果的に指導し、サポートするリーダーシップの育成
・効果的なコーチング方法
・部下のモチベーションを上げるコミュニケーション・フィードバックスキル
・タイムマネジメントスキル
などが考えられます。
社内全体のウェルビーングを考える際にまずはリーダーが、その重要性を理解していないとですね!
瞑想研修
目的
メンタルヘルスを保ち、職場での良好な人間関係築く。
また、メンタルヘルスとつながる肉体的な健康も保てるようにする。
該当するウェルビーイング項目例
フィジカルウェルビーイング
ソーシャルウェルビーイング
コミュニティ ウェルビーイング
内容
・メンタルヘルスに必要なこととは
・メンタルヘルスと身体的な健康との関係とは
・瞑想の心身の健康効果とは
・瞑想の実践方法とは
瞑想は心身ともにウェルビーイングな状態になれる、ということで注目を浴びています。心身ともにストレスを軽減してこそ、より良い職場の人間関係も築けるようになりますよね
ウェルビーイングにつながる瞑想セミナーについてご興味あれば、こちらをご覧ください。
↓ 実際の瞑想研修のレポート ブログ記事はこちら
【決断力をつける!】経営者のための瞑想セミナー開催しました
コミュニケーション研修
目的:
職場での良好な人間関係を築くための円滑なコミュニケーションスキルを身につける。
仕事の生産性を上げる正確で、効果的なコミュニケーションスキルを身につける。
該当するウェルビーイング項目例
キャリアウェルビーイング
ソーシャルウェルビーイング
コミュニティ ウェルビーイング
内容:
・職場で必要なコミュニケーションスキルについて知る
・快適な関係を築くコミュニケーションスキルを身につける(共感・傾聴など)
・正確で、わかりやすく伝えるスキルを身につける(論理的な伝え方・プレゼンテーションスキルなど)
良いコミュニケーションこそが、職場のウェルビーイングそのものと言えますね。また、長期的に使えるスキルとしてもコミュニケーションは誰もが身に着ける価値がありますね
コミュニケーションスキルの中でも、「わかりやすいコミュニケーション」ロジカル・コミュニケーションについてご興味あればこちらから内容をご覧いただけます。
↓
ロジカル・コミュニケーション検定講座
メンタルヘルス研修
目的:
自分自身のメンタルの状態を把握し、その知識やスキルを身につける。
メンタルヘルスを促進する。
該当するウェルビーイング項目例
キャリアウェルビーイング
ソーシャルウェルビーイング
コミュニティ ウェルビーイング
内容:
・メンタルヘルスとは何か、そのポイントを理解する
・ストレス管理の方法を知る
・快適な関係を築くコミュニケーションスキルを身につける
(共感・傾聴など)
・健康促進のためのプランを立てる
メンタルの安定はウェルビーイングそのものですね。人間関係、生産性全てにつながってくる要素です。
ハラスメント研修
目的:
組織内での健康的な環境を維持し、
従業員の身体的および精神的な安全を確保する。
このためハラスメントの概念を理解し、
予防および対処するスキルと意識を高める。
内容:
・ハラスメントの種類と定義を知る。性的ハラスメント、人種差別、いじめなど、異なるハラスメントの形態と定義を知る。
・組織内のハラスメント防止ポリシーと関連法律についての理解
・ハラスメントの予防策、早期対応、適切な報告手続きを教育
職場の心理的安全性のためにも、前提としてハラスメントの大枠を知っておくことは大事ですね
最後に、ファイナンシャルウェルビーイングですが、これも金融教育や資産形成の研修などの実施が考えられます。
しかし、実際ファイナンシャルウェルビーイングとはやはり、安定した経済状況ではないでしょうか。
企業としてこれを実現するために最も重要なことは、生産性の向上をし、売上の安定そして、最終的には雇用の安定がファイナンシャルウェルビーイングと言えるでしょう。
以上が具体的なウェルビーイング研修例の紹介となります。
ウェルビーイングの効果測定
では、次にウェルビーイングの実践を行なっても、
なかなかその効果を測定できない感じがしますが
定量化するにはどのような方法があるかを挙げてみました。
- 社員アンケート:
社員が働く環境や仕事スタイルなどに
対する意見を調査することで、
職場のウェルビーイングの現状を把握することができます。 - ストレスチェック:
社員のストレスレベルを測定することで、
仕事や生活から引き起こされるストレスを
把握することができます。 - 健康診断:
社員の健康状態を評価することで、
仕事や生活に影響を及ぼす要因を把握することができます。 - 生産性評価:
社員の仕事生産性を評価することで、
仕事に対するモチベーションや環境などの影響を
把握することができます。
その他、計測方法としては「幸福度診断」や
前述した「ポジティブ心理学の5つの指標」あります。
このように職場のウェルビーイングを定量的に評価することで、
現状を正確に把握することができ、改善点を明確にすることができます。
また、改善結果も定量的な測定方法を用いて評価することで、
効果を確認することができます。
まとめ
ウェルビーイングとは何か
- ウェルビーイングが生産性を上げる、とは
- ウェルビーイングの要素
ウェルビーイング研修としてどのようなものがあるか
- リーダーシップ研修
- 瞑想研修
- コミュニケーション研修
- メンタルヘルス研修
- ハラスメント研修
ウェルビーイングの効果測定
冒頭にも書いたように、
「ウェルビーイングとは何だろう?」
「ウェルビーイング研修では何を学べばいいのだろう」
と未知の部分が多いです。
しかし、企業の生産性にとって、従業員の働き方において
重要であることがお分かりいただいたのではないでしょうか。
このウェルビーイング研修が成功すれば
きっと企業にとって様々なメリットがあることでしょう。