「打たれ強くなりたい」
「ガラスのハートを強くしたい」
「小さなことでいつまでも悩むのを止めたい」
仕事や人間関係では他人からの言動に傷つけられてしまうことがよくあります。
そして、それを気に病んでしまうのも仕方ありません。
しかし、傷ついてもサッサと乗り越えて次に行きたい。すぐに忘れられたらどんなにラクなことか・・・。
そのように、心を回復させる力をレジリエンスといいます。
レジリエンスが高まると
・打たれ強くなります
・ストレスを減らせます
・前向きに行動できます
そして、ストレス状況になっても「まぁ、気にしない、気にしない」と心を広く持つこともできます。
ですから、人生を楽に生きるためにもレジリエンス力はぜひつけておきたいものです。
今回は、このレジリエンス力をマインドフルネス瞑想を使って乗り越えていく方法をご紹介します。
ぜひ、レジリエンスを高め軽やかにストレスや悩みを乗り越えていってください。
もくじ
なぜ、立ち直るのに時間がかかるのか
レジリエンスとは何か
レジリエンスとは 「困難や逆境にあっても、それを乗り越え、精神的病理を示さずよく適応している状態」 という心理学の用語です。日本語で訳すと回復する力と訳されています。
では、そのレジリエンスは、どのような具体的にどのような要素によって成り立っているかをご説明しましょう。
レジリエンス研究の第一人者であるペンシルベニア大学ポジティブ心理学センター ライビッチ博士によるとレジリエンスは6つの要素に分かれます。
また、「レジリエンスを築く10の方法」をアメリカ心理学会(APA)は提唱しています。
この2つの理論は、重なる部分があります。
ですので下記のように、2つの理論を合体させたものを図で示しました。(円:6つの要素、四角:レジリエンスを築く10の方法)
ライビッチ博士によるレジリエンスの要素からみていきましょう。6つの要素とは、1自己認識 2自制心 3精神的敏捷性 4楽観性 5自己効力感 6つながりです。1つずつ見ていきます。
レジリエンスの6つの要素
1自己認識
自己認識とは自分の感情や強みを認識することです。
「今、自分はどんな感情でいるのか」これを認識するだけで、ストレスはかなり減ります。
「ああ、自分は怒っている」「自分は悲しいのだな。だから涙が出てくる」などの感情です。
これをするためにはちょっと離れたところから自分を眺める、ということが必要になってきます。
このちょっと離れてみることこそ、そのストレス感情と距離を置くことになります。
そして、距離をおくとネガティブなことから距離を置くことになります。
そんなふうにして人は悩みが占める割合が小さくなっていくのです。
また、自分の強みを知るとは、自己肯定感を高めることになります。知るだけでいいのです。
自己肯定感を高めそこから徐々に平常の自分に戻っていきます。
2自制心
自制心これは自分の感情や行動をコントロールするということです。
先の自分の感情を認めた後には、溢れ出てくる傷つき、怒り、不安などをコントロールし適正な行動をしてきます。
そして、行動が変われば気持ちもマインドも変わっていきます。
これがレジリエンスにつながっていくのです。
3精神的敏捷性
もともと英語の専門用語なので訳すと少々意味が分かりづらいのが精神的機敏性 (せいしんてき きびんせい)です。
これは環境の変化にも柔軟に対応し、素早く動ける能力です。機敏な動きとはそういうことですね。
これも、一度落ちたマインドを再び回復するためには必要なことがわかります。
次に向かって動いていくことがレジリエンスそのものであるので、精神的な機敏性は大切であることがわかります。
4楽観性
これはただポジティブに考える、ということだけではなく
・このストレス、問題を自分を成長させる機会であると捉えられる
・自分はこれを乗り越えていくであろう、という自信を持つ
そんな楽観性です。
これもレジリエンスと強く結びついているということは想像できると思います。
5自己効力感
自己効力自己効力とは「自分ならできる」という自信です。
そして、これは実際これまで自分でできてきた、ことでしか生まれません。
そして、それは何も大それたことでなくても大丈夫。小さな達成感でもいいのです。
小さな達成感の積み重ねが大きな自信につながります。
6つながり
つながり他者とのつながりのことです。
これだけは要素の中でも能力ではなく、レジリエンスを高めるための条件になっています。
人との繋がりは回復ではとても重要です。
逆につながりが少ないとレジリエンス力がなかなかつかない、といえるかもしれません。
実際、孤独であることは様々なメンタル疾患をまねくことが調査でわかっています。
ですから、レジリエンスのために日頃から自分の周りに信頼のおける仲間を作っておくことはとても大事です。
レジリエンスを築く10の方法
では次にアメリカ心理学会(APA)は提唱している「レジリエンスを築く10の方法」をご紹介します。
1 大切な人とのつながりを育む
日頃から、身近で親しい人とのつながりを作り、それを育んでおくことです。周りの支えによってレジリエンスは高まります。
2 必ず乗り越えられるものだと知る
自分の力を信じて、自分ならできると心から感じること。それには小さなことでも良いので達成感が大切です。それで自分を信じることができるようになります。
3 変化は人生の一部だと受け入れる
まず、目の前にある事実を受け止め、そこからどう進むのかを考えること。
そして、全ては良いことも悪いことも変化していくものであることを受け入れること。
4 自身の大切な目標に向かって、少しずつでも歩み続ける
目標に対して、細かく分解して計画を立てること。 無理のない、今からすぐ始められる一歩を決めて始めること。
5 自分で決めて、自分で行動を起こす
他人から言われたこと、やらされることをなるべく減らし、自分で決めて自分から行動すること。
例え挑戦が失敗したとしても自分で決めたことであれば納得できる。そして、また挑戦できる。
6 自己発見の機会を探す
全ての経験は自分の成長だと心得ておく。すると、毎回自分の成長に気づくことができる。
7 ポジティブな自己肯定感を育てる
失敗して、思い通りにいかなかった自分も認め、それをしたことを認めてあげること。
8 物事を大局的にみる
何事も長い目で見ると無駄なことはない。そして、全てが自分の成長とつながっていることを知ること。
9 楽観志向でいる
物事の良い面、明るい面に意識を向ける。必ずポイティブな面はあるはず。そして、ポジティブな言葉を口にすること。
10 自分のことを大切にする
自分の心も体も大切にしよう。相手を労わるように、自分のこともいたわり大切にする。
以上のようにレジリエンスを成り立たせるものは上にあげた6つの要素と10の項目になります。
私の解釈ではどちらも重なることを言っていると思いますので、上の図を参考にご自分のレジリエンス力を改めて自分自身を振り返ってみましょう。
マインドフルネス瞑想でレジリエンスを高める
マインドフルネス瞑想とは
瞑想は最近かなり注目され、メンタルヘルスの手法としても取り入れられるようになってきました。
このマインドフルネス瞑想はレジリエンスを高めるのにとても有効です。
誰でもできる方法をご紹介しますので、ぜひ実際お試しください。
この「マインドフルネス」とは「今、ここに集中する」「今、ここを大切にする」という意味です。
もともとこのような「今、ここに集中する」「今、ここを大切にする」という考え方は「禅」から始まりました。
例えば「禅」の言葉(禅語)にある「無心(むしん)」などは、まさに「今、自分が行なっていることに集中、没頭し、他の考えや思いは浮かんでいない」状態です。
ですから、私たち日本人には「今、ここを大切にする」という考え方は、なじみのある、または、何となくわかるものであると思います。
とりわけ忙しく、情報が多い現代人は
「次にあれをしなくては・・・」
「あのことはどうしたのか・・・」
などと気が散りやすく
「今、ここに集中する」ことがますます難しくなってきています。
だからこそ、本来私たち日本人が大切にしてきた
「今、ここを生きる」考え方=「マインドフルネス」が見直されているのでしょう。
私たちはいつも心がさまよっている
多忙で、情報が多い現代に生きる私たちは、いつもたくさんの刺激を受け、気が散っている状態です。
私たちの心はいつもあちらこちらをさまよい「心ここにあらず」です。
ハーバード大学の心理学者マット・キリングワース博士の研究によると
私たちは日常生活(仕事、食事中、歯を磨く、通勤など)の中で47%の割合で他のことを考えているのだそうです。
つまり、起きているときの半分の時間は「今実際やっていること以外のこと」を考えています。
これでは、効率が悪く、労働生産性も下がってしまいます。
加えて、ハーバード大学の心理学者マット・キリングワース博士の研究では、「今ここに集中していない」状態では「幸福感」(幸せを感じる度合い)が低くなるそうです。
効率が悪く、幸福感も低い状態=集中していない状態です。
しかも、研究でもわかるように現代の私たちはそんな状態が普通になっています。
現代人の原因がはっきりしない
・イライラ
・焦り
・不安
・緊張
は、まさにこのような心の状態を表しているといえるでしょう。
レジリエンスにつながるマインドフルネス瞑想の効果
では、実際マインドフルネス瞑想はどのようなレジリエンス効果があるのでしょうか?
イライラ、不安を軽減する
オランダの医療や心理学の専門家チームの研究調査では、被験者に8週間瞑想を行い、 MRIで脳内の変化を検査したところ、
・脳の扁桃体(へんとうたい)の活動が抑えられたことがわかりました。
扁桃体とは「感情をつかさどりストレスホルモンを分泌する」役割があります。
つまり、ストレスを伴う不快な感情:イライラや不安、緊張などを抑えることができるようになった、ということです。
8-week mindfulness based stress reduction induces brain changes similar to traditional long-term meditation practice–a systematic review. Brain and Cognition Gotink, R. A., Meijboom, R., Vernooij, M. W., Smits, M., & Hunink, M. M. (2016)., 108, 32-41.
前向きな気持ちになる
瞑想をすると「ポジティブな気持ちになれる」という効果も期待できます。
仕事やプライベートなど、人は生きるうえでさまざまな不安がつきまとうものです。
特に、不安な気持ちになりやすい人は自律神経が乱れ、交感神経が過度に高ぶっている可能性があります。
瞑想をすることで、恐怖心や危機感が生まれる神経回路との結びつきを弱くできるといわれています。その結果、不安を和らげることができるのです。
副交感神経が優位になることで穏やかな気持ちになり、前向きな思考を維持するために効果を発揮してくれます。
自己認識の向上
前半でもご紹介したように、「自分のことを客観的にみてみる」「自分の感情をちょっと離れたところから眺める」ことがレジリエンスの要素としてあります。
マインドフルネス瞑想は、この「自分を客観的に眺める力」を高めることができます。
それは脳の前頭前野というところが司っている能力であり、この部分が瞑想で活発になることがわかっています。
ですから、瞑想によって自己認識の向上が期待できるのです。
マインドフルネス瞑想のやり方と注意点
瞑想前の注意点:環境を整える
では、いよいよ瞑想のやり方を解説していきます。瞑想に入りやすくできるように、まずは環境を整えることがとても大切です。
視覚を閉ざす:目をつぶる、部屋をやや暗めにする(雨戸やカーテンを閉める)
聴覚を閉ざす:なるべく静かな場所を選ぶ(部屋のドアを閉める)ヒーリング音楽などはかけない、20分の瞑想時間はタイマーをかけない(ときどき時計を見てはかる)
味覚を閉ざす:食後直後は瞑想をしない(食後直後は消化に意識がいくから)、食後は2ー3時間あけてからする。
臭覚を閉ざす:お香やアロマなどは焚かない
など、五感を閉ざし意識の深いところへアプローチします。
そして、心身ともにリラックスしていることが大切です。ですから、暑すぎず、寒すぎず、外に気が向かわないよう環境を整えましょう。
もちろん、瞑想によってリラックスできますが、その前の環境づくりも大切です。
では、20分間時間が取れるようでしたら、本格的に瞑想をやってみてください。
瞑想の手順 (シンプル瞑想5ステップ)
ステップ1 あぐらをかくか椅子に座る
コツ1 もし、床に座るのだったら座布団などを 2つ折りにして、お尻の下に敷く
コツ2 手のひらは上向きでも下向きでもオーケー
コツ3 背骨を真っ直ぐにする。体を左右に揺すって、お尻の下のコリコリした骨、坐骨(ザコツ)を床に突き刺すイメージ。ただしあまり真っ直ぐを意識すると背骨がそるので、自然な感じで真っ直ぐにする。
↓
ステップ2 まぶたを閉じる
コツ ぎゅっと閉じずに、目を閉じたまま 下向き45度くらいを見ているイメージ
↓
ステップ3 ゆったり深呼吸を始める
コツ1 ゆったりと深呼吸を10回くらい繰り返す
コツ2 鼻から吸って、鼻から吐く腹式呼吸
コツ3 深呼吸のリズムは 吸って3 吐いて6 くらいのカウントで
↓
ステップ4 20分間そのままの状態で座り続ける
コツ 自然な呼吸で行う
↓
ステップ5 20分間終わったら、徐々に瞑想状態から出るようにする
コツ 急に動いたり、目を開けたりしないこと。徐々に動くこと
瞑想の感覚
瞑想はただ目をつぶって座っているだけなので、特に始めた頃には
「本当にこのやり方でいいのだろうか」と感じるのはふつうです。
瞑想がやれているかどうかは続けていけば、自分の感覚で腑に落ちる感じ
「ああ、瞑想をやれている」という感じがあります。
その感覚は本当に個人的なものであるので説明がしにくく「やればわかる」としか言いようがないのですが、何か目安のようなものが欲しいのもわかります。
瞑想を始めた頃の参考になさってください。
より深い瞑想の状態
20分間の瞑想を始めて10〜15分くらい過ぎると普段とは違う意識の状態になる時があります。実際、脳波でもそのように出ています。
これはある種の通常の意識を超えている状態とも言えます。
そして、次のような感覚があることがあります。
・体がポカポカしてくる
・手足の感覚がなくなる
・水中に入っている感じ
・穴の中に入っている感じ
・至福感を感じる
・時間の感覚もない
・アイディアが降ってくる
・ヴィジュアルが見える
・代謝などのエネルギーが低い状態になる
・離れたところから自分を眺めている感覚
・実態があまりない
・不快感がある(これは悪いことではありません)
瞑想に深く入っている時の脳波は、寝ている時と覚醒している時のはざまにあるような感じになります。
ちょっといつもの日常とは違う感じの感覚です。
瞑想を習慣にする
瞑想は1回やっただけで、すぐ効果が現れるものではありません。
ですから、毎日続けられるよう習慣化する必要があります。
そのためには
毎日瞑想をやる時間を決めることです。
「この時間にやらなければならない」という決まりはありません。ですから、一番確実に時間がとれる時間を設定しましょう。
そして、自動的にその時間が来たらやる、というように決めて実行してみてください。
習慣化は、毎日おおよそ3週間続けられたら、できるとも言われています。
最初の3週間は少々苦痛もあるかもしれませんが、それを目安に続けてみてください。
レジリエンスを高めていくステップ
ご説明したように、マインドフルネス瞑想はレジリエンスのいわば基礎体力をつける筋トレのようなものです。
レジリエンスの実践編としては、以下のステップで進めていきます。
これは考え方としては目標達成と同じです。
レジリエンスを高めるというゴールを決めて進んでいくためのステップです。
ステップ1 問題の明確化
ステップ2 対処法のプランを立てる
ステップ3 評価する
この3つのステップを取り上げてみます。
ステップ1 問題の明確化
まずは、どんな言葉に傷ついたのかを書き出してみます。
問題を曖昧に捉えていては解決することはありません。
ですから具体的に何が一番傷つきやすいポイントであるのかを捉えてみましょう。
やり方としては、日記のように
1 傷つけられた相手の言葉
2 その時の気持ち
3 傷つき具合のレベル(自分の主観的な評価でオーケー)
それぞれをメモしてください。
例)
◯月◯日
1 傷つけられた相手の言葉:
私の企画書の作成が遅くて先輩から「もういい。後は私がやる」と言われた。
2 その時の気持ち:
「ああ、先輩に悪いな。でも、今日頑張れば間に合うのに、そんなに決めつけなくてもいいのに」
3 傷つき具合のレベル:
レベル7 結構傷ついた
このような感じでメモしていきます。
このメモが溜まってくると、自分の傷つきやすいポイントがわかってきます。
ステップ2 対処法のプランを立てる
傷つきやすいポイントがわかってきたら、今度は「自分が傷つくであろう場面」が想定され、それに対する対処が予想できます。
例)自分は頑張っているのに、それを否定された時に傷つきやすい
↓
対処法:
とりあえず「やれるところまで、自分にやらせてください」と主張する。
あるいは「こういうやり方もあると思います」と主張する。
この対処方法を頭に残しておくと、いざという時傷つき、ただ呆然と立ちすくむのではなく何かしらの行動が取りやすくなります。
ステップ3 評価する
傷つくことを言われて、傷ずついた時にレジリエンスレベルはどのくらいか評価する。
下記、私の考えたレジリエンス レベルの段階評価を示しておきます。参考になさってください。
もちろんご自身でレベルを作成されてもOKです。
このレベル表を参考に何かストレスがあった時の立ち直り具合を評価してみます。
レベル6 | 傷ついたとしても、「それは違うと思います」とか「私はこう思います」とか「今の言葉傷つきました」など言い返せる |
レベル5 | 傷ついたとしても、サッと短時間で元の平常心に戻れる |
レベル4 | 傷ついたとしても、そのことを紙に書く、他人に話すなどしてスッキリする |
レベル3 | 傷ついて、次の日も思い出して嫌な気持ち、あるいは自分はダメだと思う |
レベル2 | 傷ついて、2、3日間に何度か思い出して嫌な気持ちになる |
レベル1 | 傷つき、2、3日間中ずっと気になる、泣くこともある。 |
以上のように
・問題の明確化
・対処法のプランを立てる
・評価する
を繰り返していくことで、レジリエンスや打たれ強さということを明確に捉え、行動に落とし込み、そして、レジリエンス力が高まっていくことをはっきりと認識できると思います。
そして、レジリエンスを高めていくステップでは、レジリエンスを具体的に捉えてそれを一つ一つ高めていく実践トレーニングと思っていただければ良いでしょう。
この2つの軸で打たれ強さ、前向きな気持ちになるレジリエンスを高めることができ、自分の意見も伝えられるようになるでしょう。
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