書評:運転者 喜多川泰著

運とは何か?を教えてくれる小説

今回は私にしては、珍しく小説を紹介したいと思います。
著者喜多川泰の「運転者」という小説です。

あらすじは、さえない保険外交員の岡田修一はひょんなことで不思議なタクシーに乗りました。その運転手、御任瀬卓志(おまかせたくし)は
「私はあなたの運を転ずる、運転手です。」 とダジャレのようなことを言って、岡田に運について、またそのタクシーで岡田の運を変えていく場所に連れて行くと言う不思議な話です。

この中で運と言うものの本質について、とても興味深い言葉がたくさんあったのでそれを紹介していきたいと思います。

あなたも私と同様、きっと、今までの運の捉え方が変わるはずです。

まず、タクシーの運転手は主人公の男性に上機嫌でないと運は捕まえられないと言います。

「運が劇的に変わるとき、そんな場というのが人生にはあるんですよ。それを捉えられるアンテナが全ての人にはあると思ってください。

そのアンテナの感度は上機嫌の時、最大になるんです。逆に機嫌が悪いとアンテナは動かない。

不機嫌だと最大のチャンスすらイライラしたまま、さっさと終わればいいのにと思ってしまうんです。」




大型の保険の契約を解約されて、焦ってイライラしていた岡田は、最初これをすぐには受け入れられませんでした。

まぁ、私だって焦ってイライラしていたら不機嫌になってしまいます。

これは仕方ないことですよね。

そんな時もニコニコ笑えるってどういう心境なんでしょうか、って思っちゃいました。

でも、
たしかに、この運転手も言っているように、不機嫌で良いことなんて一つもないです。

そして、これは不機嫌でイライラしたり、不安なときには「視野が狭くなる」って、そのことを言っているのだと思います。

私も経験がありますが、もうそうなってしまうと、その不機嫌、不愉快なことしか考えませんから。
そして、考えたくなくてもどんどんその不機嫌さが増長するっていう。
たしかにそんなときには、チャンスが来ても、気づいていないかもしれません。


何事も取り方しだいといえば取り方しだいです。
運転手が言うチャンスのアンテナの感度が上機嫌の時、最大になる、というのはなるほどと思います。

運は貯めて、使うものとは

また、この運転手は運の本質を言っています。

「運はいいか悪いかで表現するものじゃないですよ。

使う」「貯める」で表現するものです。だから先に貯めるがあって、ある程度たまったら使うができる。

少し貯めてはすぐ使う人もいれば大きく貯めてから大きく使う人もいる。運がいいと言われている人は貯まったから使っただけです。」



これには「なるほど!」と思いました。
私も今から振り返ると、あれは実は運が悪かったのではなくて、運が転換する時だったんだと思うことがたくさんあります。

例えば、私は教員になる前に教員試験に2回も落ちましたが、そのおかげで全く想定外だった障害児学級で非常勤講師として働くことになりました。
大学から「障害児学級で非常勤講師やりませんか」と声をかけていただいたときには
「うーん」と、とても迷ったのですが、実際始めてみると、それはそれはとても充実して、まさに人生が変わるような体験でした。

いっけん、試験に落ちた事は遠回りになったかもしれませんが、人生的には落ちてよかったと思っているくらいです。

あるいは、教員を辞めてある留学会社に内定していたのですが、入社する前にとても不誠実な会社だということがわかり、内定を取りやめ、無職になってしまいました。

しかし、そのおかげで、その後、就職活動をして自分にぴったりの研修会社にたまたま入ることができたのです。そして、その会社では12年もお世話になり、ここでもまた予想もしていなかったくらいの経験をさせてもらいました。

あのまま留学会社に就職していたら、そんな偶然の出会いもなかったでしょう。ちなみにその留学斡旋会社はその後、倒産しました。

また、起業して最初はお金が稼げなくて大変でしたが、稼ぎ方を必死で学びビジネスの本質(他人が喜ぶことをする)が実感としてわかることとなりました。
そんな基本的なことも、サラリーマン時代には本当の意味ではわからなかったのです。


こんなふうに自分に置き換えてみると確かに、いっけん運が悪いなぁとか、努力したのに報われないなぁ、という時は運が貯まっているのだ、そんなふうに思うのです。

がんばっても報われない時は運が貯まっているんですよ。

努力してすぐ結果が出たり、何かいいことが起こったりする人は貯めた分を小出しにして使っているだけで、他の人より取り立てて運が良いわけではないですよ。

こうやって運というものを良い悪いではなく、運が貯まっている、使うと考えると、努力のしがいがあります。

努力が報われない時、ホント凹んじゃいますから・・・

まだ、うまくいっていなくても、運を貯めているんだと思えば、もう少し頑張ろうという気になります。
そして、運転手は
「今日、頑張って明日実になるなんてどんなに早く育つ種子でも無理なことです」とも。

はい、おっしゃる通りです。笑 

また、「日々上機嫌で生きるだけで運は貯まります」とも言っています。
私はこの小説を読みながら「上機嫌」な人として、子供たちの笑顔を思い浮かべました。

子供の笑顔の回数は1日400回だそうです。それに対して大人はたった13回!!
なんと、つまらない人生でしょうか。

このことから、もともと私たち人間は、本能的に「上機嫌は運を貯める」ことを知っているのではないか、と私は思うのです。

それで、生まれてから最初の時期は本能的に上機嫌でいられる、ところが生きているうちに、どんどん忘れてしまうのでしょう。

そして、運も貯めれなくなり「なぜ、俺ばっかりこんな目に会う・・・」って。

あの上機嫌だった自分を思い出そうよ、って感じですよね。
そしたら、運だって貯まってくるのに・・・・。

小説「運転者」は運とは、人の生き方そのものであると気づかせてくれた、まさに私の運も転じさせてくれた物語でした。

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ABOUTこの記事をかいた人

日本一わかりやすい瞑想・コミュニケーションセミナー講師。小学生・大学生、社会人、外国人に約5000人以上、のべ1万時間の授業・セミナーを行ってきた。元早稲田大学非常勤講師。ビジネスパーソン向けのメンタルヘルス・ウェルビーイングのための瞑想セミナー、コミュニケーションセミナーを実施中。セミナー・講演・取材お問い合わせはサイトから